埼玉大学・基盤教育研究センター

FD:教育改善

FDとは?

FDとは「Faculty Development」の略で,従来は「教授法開発」などと直訳されてきましたが,今日では広い意味での「教育改善活動」を意味します.このようなFDは,2008年より文部科学省が定める大学設置基準・第二十五条の三で以下のように規定され,義務化されました.

大学は,当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする.

大学院におけるFDについても,2007年より文部科学省が定める大学院設置基準・第十四条の三で以下のように規定され,義務化されています.

大学院は,当該大学院の授業及び研究指導の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする.

上記から分かるように,FDの規定は学部も大学院もほとんど変わりません.もっとも注意すべきポイントは「組織的」という言葉にあります.つまり,FDは大学が組織として取り組まなければならないものであるということです.これは,大学という組織の構成員-教員・職員・学生-全員がFDに取り組まなければならないことを意味しています.

ポイント:

  • FDは大学が組織的に行わなければならない義務である.

アクティブ・ラーニングの実践

アクティブ・ラーニングとは,特定の学習方法ではなく,学生の「思考」を「活性化」する学習形態全般を指す用語です.具体的には,学生が実際にやってみて考える,議論して考える,応用問題を解くなどの学習活動を通して,より深い学びに到達するための手段と位置づけられます.FDの文脈では,授業を改善する取組の具体例として,教員から学生への一方向的な知識伝達型の講義を廃し,アクティブ・ラーニングの導入が推奨されています.

形だけのアクティブ・ラーニングを取り入れた授業の実践は難しいものではありません.しかし,効果のあるアクティブ・ラーニングの実践は容易ではありません.実際のところ,教員も学生もアクティブ・ラーニングに慣れていないため,ただディスカッションやグループワークをしただけで終わってしまう場合も少なくないようです.このような形だけのアクティブ・ラーニングがもたらすうわべだけの満足感は深い学びへの到達を阻害する可能性があります.

効果のあるアクティブ・ラーニングを実践するには,どのような点に注意すれば良いのでしょうか?アクティブ・ラーニングは教員の力量や学生の個人差に依存する可能性もあり,成功事例をそのまま模倣することが難しいようです.逆に,失敗の事例を集めた有用な資料があり,そこから学べることは少なくありません.以下は,中部地域の7つの大学がアクティブ・ラーニングに取り組んだ成果や失敗事例などを紹介している資料です.単なる失敗の事例を並べただけではなく,こうすれば良かったという反省と対処方法も書かれており,非常に参考になります.

 

TA・SAの活用

一般的な大学の授業において,教員と学生は「一対多」の関係になります.つまり,一人の教員が多数の学生を相手に授業をしなければなりません.しかし,一人の教員の目の届く範囲はそれほど広くありません.それゆえ,行き届かないところが出てくるのもやむを得ないことです.

いや,そんなことはない!ハーバード大学教授マイケル・サンデルの「白熱教室」は確か学生数1000人だったはずでは?

確かにマイケル・サンデル教授の「白熱教室」は1000人の学生が履修しています.よく,「どうして日本の大学では「白熱教室」のような授業ができないのか?」と言われますが,実は「白熱教室」もマイケル・サンデル教授一人では成り立たず,その裏側には,多数のTA(Teaching Assitant)が存在しているのです.

しかし,日本では,「授業は教員が一人でするもの」という固定観念を強く持っている教員が少なくありません.それゆえ,FDの文脈でTAという語が出てくることに違和感を覚えるFD関係者もいるようですが,教員の自助努力だけでは限界があるうえ,TA自体が教育の一環であり,TAを活用することで,重層的なFDになりうるという点からも,TAの活用をもっと推進すべきです.

TAやSA(Student Assistant)の活用において注意しなければならない重要なポイントは「教育的な配慮」が必要ということです.TA・SAは単なる「雑用係り」ではありません.TA・SAになる学生自自身にとっても何かの「学び」になるように配慮しなければなりません.また,TA・SAになる学生にも注意してもらわなければならないことがあります.TA・SAを単なるアルバイトと同列に考え,ちょっとした理由で欠席するなどということがあってはなりません.

TA・SAに関する詳細は以下の「TA・SAマニュアル」をご覧下さい.

 

授業改善のツール

より良い授業の実現に向けて,授業を改善するのは良いことですが,何をどう改善すれば良いのでしょうか?改善の目的や方向性が見えないまま,手探りで授業を改善しても,その成果は望めません.つまり,「改善」の前に,改善すべき点を「調査」する必要があります.多くの大学では授業評価アンケートが行われていますが,以下の点から授業の改善にはあまり役立ちません.

  • 最後の授業で実施されるため,当該授業の改善には間に合わない.
  • 項目の内容がおおまか過ぎて,改善すべき点が分からない.
  • 数値による評価の結果を見ても,どう改善すべきか分からない.

授業を改善するには,授業の具体的な内容にまで踏み込んで調査する必要があります.学生が躓いたのはどこか?何が分からなかったのか?という点を知ることなしに,授業の改善をすることは不可能です.しかし,このような調査は多くの大学で行われている授業評価アンケートでは実現できません.

以上から,授業の改善には,各教員が独自にアンケート調査を実施する必要が出てきます.これは教員にとって少なからぬ負担でしたが,今やアンケートを簡単に作って実施できるWebサイトが多数存在し,アンケートの実施に要する労力は非常に低くなりました.たとえば,「アンケートツクレール」などのWebサイトでは,タイトルを入力するだけで適当な項目のWebアンケートが自動生成されますので,それを少し編集するだけで,独自のアンケートを作ることができます.アンケートには,パソコンや携帯電話からいつでもどこでも回答できますし,集計結果もWebで見ることができます.

 

シラバスとその書き方

シラバスは授業の前に学生に配布され,授業で扱う内容,授業の進め方,評価方法など授業の全体像を示す文書であり,以下の性格を持っています.

  • 授業に関する学生と教員の契約書
  • 学生が授業を選択するためのガイド
  • 予習・復習の指針を与える文書

このようなシラバスは十分に注意して作成する必要があります.具体的な注意点は以下の「シラバス作成ガイド」をご覧下さい.

 

成績評価の方法

大学では,論述形式の試験やレポートを試験の代わりにすることがよくありますが,それらの採点基準は教員の頭の中にだけある場合がこれまではほとんどでした.しかし,それを明確にし,学生に示すことが今日では求められるようになっています.さもないと,学生は成績がどうして「不可」なのか,あるいは「良」なのかといったことが分からず,成績評価の方法に疑念を頂くことになります.

しかし,論述形式の試験やレポートの採点基準を文章で記述するとかなり煩雑なものになりがちです.それを表形式でうまくまとめたものが「ルーブリック」と言われるもので,成績評価への積極的な利用が求められています.こうした成績評価の手法等については,以下をご覧下さい.

 

授業時間外学修の支援

FD活動は授業の改善だけに留まりません.授業時間外に学生が行う学修を支援することも求められます.その理由は大学設置基準による単位の定義(第二十一条)から明らかになります.

一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし,授業の方法に応じ,当該授業による教育効果,授業時間外に必要な学修等を考慮して,次の基準により単位数を計算するものとする. ※第二十一条(抜粋)

そして,以下のように続きます.

一 講義及び演習については,十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする.

上記による単位の定義から,以下のことが結論付けられます.

  • 一単位には四十五時間の学修が必要
  • 講義形式の場合,十五時間から三十時間までの授業時間が必要
  • 授業では足りない分(四十五時間-授業時間)の授業時間外学修が必要

多くの大学では,90分授業を15回行う講義を2単位としています.この場合,授業時間外学修の時間は以下のようになります.

  • 90時間の学修が必要 ※45時間×2
  • 22.5時間の授業 ※1.5時間×15
  • 67.5時間の授業時間外学修 ※90時間-22.5時間

つまり,一般的な2単位の講義であれば,授業以外に67.5時間の学修が必要になります.このような時間にもとづく単位の定義が妥当かどうかという議論はありますが,日本の一般的な大学生の学修時間が短いことは周知の事実であり,大多数の大学生が学修するように導くことが求められています.

学生に授業時間外の学修をさせることは難しくありません.課題を出し,その提出を求めれば,学生は学修します.しかし,学生が提出した課題はきちんと見て,学生にフィードバックすることが求められます.また,課題ができない学生のサポートなども必要になります.こうしたことが,授業時間外学修の支援として,教員に求められているのです.

ポイント:

  • 単位には授業時間外の学修が含まれている.

学習管理システムの利用

学生の授業時間外学修を支援することは,教員にとってかなりの負担になります.しかし,その負担を軽減することができるシステムが多くの大学で導入されています.その学習管理システムと呼ばれるシステムを使うことで,以下のことが簡単に実現できます.

  • 講義の情報を掲載するホームページの開設
  • 講義資料をネットで配布できる
  • 学生のレポートをネットで効率的に受け取れる
  • 学生とネットで議論する場ができる
  • 小テストの作成と採点が省力化できる

インターネットに接続されたパソコンさえあれば,上記のことがいつでもどこでも可能になるため,学習管理システムの利用は学生の授業時間外学修を支援するうえで,とても有用なツールとなります.学習管理システムの利用は難しくありません.ホームページを介した文字入力やファイルのアップロードといった操作が主であり,その習得に時間はかかりません.

埼玉大学では,WebClassという簡易な学習管理システムを導入しています.詳細は以下の簡易マニュアルと動画による説明をご覧下さい.

また,埼玉大学では,WebClassの利用講習会も開催しています.利用講習会では,WebClassの典型的な利用方法についてパソコンを使って実演するとともに,利用上の注意点などを説明しています.利用講習会の資料は本サイトの「各種資料(ツール関連)」に掲載されています.WebClassの利用はこちらから.

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